往来物手習い

むかし寺子屋では師匠が書簡などを元に往来物とよばれる教科書をつくっていました。
寺子屋塾&プロジェクト・井上淳之典の日常と学びのプロセスを坦々と綴ります。


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こんなご相談をいただきました(第2弾)

ある方からメールでこんなご相談をいただきました・・・の第2弾です。

ご相談の内容と私の返答を以下にご紹介します。

Q:福祉関係のNPOで代表をしています。スタッフの1人がよく「体調が悪いのに私は頑張っているんだ」というような意味のことを言うのです。たとえば、昨日も「朝、めまいで吐き気があって、今日一日大丈夫かと思ったんですが、昼からは良くなり頑張りました」と言うのです。

そんな時に私としては「そうなんですか」程度のことしか思わないですし、仕事がうまくできないことの言い訳けみたいに聞こえてきて、ねぎらいの言葉が言えない・・・というか、「医者行ったほうがいいよ」みたいな言葉は、あまり言いたくないのです。

そのスタッフは、たしかに立場的に抱える仕事は多いのですが、自分で工夫して効率をあげることや、そうした工夫を自分で見出すのがなかなかできません。私がアドバイスすれば基本的なことは踏襲できても、自分で応用することができないのです。

事務所に入ってもう半年以上経つんですが、今でも単純な事を聞きにきたり、重要なことを勝手に進めて行ってしまったりするので困っています。仕事に対してのメタ認知度が低いのかもしれません。

たとえば、作業と仕事の区別・・・「作業」は効率をもってあたり、「仕事」は丁寧にあたることが必要だ、ということがなかなかわからないのです。もちろん、この私もたまに判断がつかず面倒になってしまうこともありますが(^^;)。

誰しも自分の存在意義を誇示したいという思いがあるんだとは思うのですが、私が自分の心にうそをついてねぎらいの言葉を言っても、すぐにばれてしまうでしょうし、どんな対応をしたよいのか教えてください。


A:お役に立てるかどうかわかりませんが、思ったことを少し書いてみますね。

この方と直接お会いしていないので、書いて下さった範囲でしか推測するしかないのですが・・・この方は、被容認願望、つまり、人から認められたいという気持ちが人一倍強いように見受けられるんですが、たぶんこれは、人から否定的な評価を受けることに対してストレスを感じることから来ているんではないかと思うんですね。

したがって、まずは、「頑張っていることを認める」「きちんと評価を示す」というのが、関わる人間の基本姿勢として求められますね。

その方の被容認願望の強さには、自身の生育歴や家族環境など、そうなる原因や理由が必ずどこかにあります。たとえば、厳しすぎる親や亭主関白な夫など、まわりの人からなかなか自分がなかなか評価して貰えない環境の中で育ったとか、一方的に自分の価値観に従わせようとするような人とずっと一緒に生活してきた等々・・・ですが、価値観とか考え方というものは、簡単に変えることはできませんし、仮にその原因が見つかったとしても、それで問題が解決するわけではありません。

まずその方には、「自分は『人から認めてもらいたい』という気持ちが人よりも強い人間だ」ということをわかっていただくところからスタートするしかなく、あなた自身が悪いわけでも何でもないので、「そんなに頑張らなくてもいいよ」「頑張って自分を変えようとしなくて大丈夫だよ」というメッセージを伝えることですね。

「自覚して戴く」「そのままでOKということを伝える」というのも、なかなか難しいことなんですが、べてるの家のドキュメンタリー映画予告編4「安心してサボれる会社づくり」をスタッフの人たちみんなで見て、感想をシェアするというようなことも有効だと思います。

また、前に「価値観とか考え方とかは、簡単には変えることができない」と書いたことについてですが、もしその方が、今の自分の価値観や考え方というものが、実はまわりの他者から植え付けられた仮そめのものである可能性が高く、それを変える(本来の自分の考え方や価値観を取り戻す)ことは可能なんだ、ということを理解できるような方であれば、そのことは伝えても構いません。

つまり、自分自身の価値観や考え方そのものが間違っているのではなく、価値観や考え方の「使い方」が間違っている・・・価値観や考え方のレベルの話でなく、「使い方」のレベルの話なんだということです。

ようするに、先日のNHK教育TV「ハートでつなごう」に出演されていたべてるの家の本田幹夫さんの言葉を借りれば、価値観や考え方が「誤作動」を起こしているわけですね。

「誤作動を起こすような思考回路が他者から植え付けられている可能性が高いので、それをこれから探っていきましょう。それをすすめるには具体的な手段や練習方法があるので、誰でも本来の自分の価値観や考え方をかならず取り戻すことができるし、焦らずに少しずつしていけばいいんですよ」と伝えればいいと思うんです。

その練習は、SST(ソーシャルスキルトレーニング)が良いと思いますが、認知療法的なアプローチも有効でしょう。

また、ひとことで認知療法といってもいろいろなやり方があり、たとえば、津市の森心身医学クリニックでは、「情動コントロール」とよばれる独自の認知療法を実践されています。たまたま私はここの院長と知り合いで、この療法を知ったのですが、ここのサイトに詳しく書かれていますので、よかったら参考にして下さい。

「使い方」レベルでの自己変革のために必要な基本姿勢をひとことで表現するとしたら、「現実視」ということで、私が寺子屋塾の教室で使っているらくだメソッドで言えば、「学習記録表」がこの「現実視」を促すツールということになります。

つまり、自分の現状についてのデータを日々蓄積していき、情報の可視化、共有化を日常的にすすめていくことで、自己受容力、判断力、自己決定力、問題解決力etc.を培っていくというやり方をしているわけですが、これはいろいろなことに応用可能で、いま私が教室外でやっている仕事は、ほとんど教室でやっていることをそのまま応用しているだけだと言っていいほどです。

たとえば、この方のように、口頭で言ってもなかなか伝わらないような場合、仕事の状況についての現状データをとって蓄積し、そのデータをもとに話すように努めることで、伝えたいことが伝わりやすくなるのではないでしょうか。

また、いまその人が携わっている仕事や作業のレベルをスモールステップに分解し、それぞれのレベルにおける到達目標を明確にしていくことも大事なことですね。

そうすれば、自分自身がいまどのレベルにいるのか、ということが明確にわかって励みにもなるはずで、そうすることで、具体的に自分がどうすればいいかという判断も、少しずつ自分でできるようになっていくはずです。

あと、心がけることとしては、内省的に生活する習慣づけ(森クリニックの院長は「情動の客観視」と言われています)で、自分のストレス因子に触れるような出来事(いやな事)があったときに、「なんで嫌な気分になるのだろう?」「何が不満なの?」「自分は何に対して焦っているの?」「何が不安なの?」というような問いかけを自分自身に対して行ってみるということですね。

ただ、自分の不快情動に対しても鈍感になってしまっていて、無自覚な場合も多いようで、森先生は、このことを「ストレスは挨拶をしてやってこない」って言われています(笑)。

そうした場合は、まず不快情動の発見から入らないければいけませんから、「気になることは?」「心配なことは?」「腹の立つことは?」などと問いかけたり、「煩わしい」「〜しないと気が済まない」「気が重い」といった感情がいったいどこから生じているのかを探っていくステップが必要でしょうね。

合い言葉は、問題が起きても「それで順調!」です・・・って,例によってあまりご相談のお答えにはなっていなかったようにも思いますが、ご健闘をいのります。
posted by Akinosuke Inoue 22:19comments(0)trackbacks(0)pookmark


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