往来物手習い

むかし寺子屋では師匠が書簡などを元に往来物とよばれる教科書をつくっていました。
寺子屋塾&プロジェクト・井上淳之典の日常と学びのプロセスを坦々と綴ります。


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短編集『闇鍋』より 会話劇「卑猥な漢字」

【会話劇】卑猥な漢字

「ねえ、“凹凸”って、とても卑猥な漢字だと思わない?」

「藪から棒に何言ってんですか先輩。女子高生なんですから、そういう下ネタは控えてくださいよ」

「女子高生は下ネタが大好きなのよ」

「男の夢を壊さないでください」

「夢と現(うつつ)は違うのよ。夢を見たけりゃ寝なさいな。どうせ生きてても後悔するだけよ」

「永眠しろと!?」

「で、社会的にはもう死んでいる変態な後輩に、専門的な意見を聞きたいのだけれど。変態として“凹凸”という漢字から、ゲスなアナタはどんな妄想をするのかしら?」

「社会的に死んでないし、変態でもないですよ。さらに言えば“凹凸”という漢字からゲスな妄想なんて、普通はしません」

「あらあら、照れちゃって。童貞君には“凹凸”はストレート過ぎたかしら」

「『ストレート過ぎた』って何ですか。漢字にストレートも変化球もありませんよ。……というか、さっきから漢字辞典を真剣に読んでいると思ったら、こんなくだらない事を考えてたんですか」

「なによ、その蔑むような視線は! 憐れむような口調は!美少女女子高生には下ネタを語りたい時だってあるのよ!」

「さりげなく自分で美少女とか言わないでください」

「ワタシが美少女なのは紛れもない現実なのだから、別に良いじゃないの。アナタが紛うことなき変態ブサイク童貞なのと同じ、現実なのよ」

「一言多いです。一言余計です」

「ふふ、眉間にシワを寄せちゃって。可愛い。さて、閑話休題するけれど、世の中には卑猥な漢字が多く存在しているのよ」

「あー……“嬲”とか“姦”とかですか?」

「うわぁ…………普段アナタがどんな劣情を抱いているかが垣間見えるわね。気持ち悪っ……」

「ドン引きしないでくださいよ! 普通はその辺りの漢字を想像しますって!」

「顔を真っ赤にして普通普通と五月蝿いわね」

「じゃあ、これ以外にどんな漢字が卑猥だって言うんですか」

「そうね“抜”なんてどうかしら。手で自分の友をヌく。卑猥じゃない?」

「たしかに、卑猥ですね」

「アナタの場合、友はムスコなのでしょうけれど」

「いつにも増して下ネタ全開ですね……」

「これが女子高生よ。他にも“包括”なんて生々しくて卑猥だと思うわ。手と舌で包むんですもの」

「ナニを、とは聞きませんよ?それにしても、よくもまあそんな発想が出ますね」

「美少女だからよ」

「意味が分かりませんね」

「そんなアナタにピッタリな漢字は“液”ね」

「夜の水、ですか?」

「そうよ。毎朝毎晩、年がら年中孤独エッチしているアナタには最適でしょ?だから水のように薄いのよ」

「ボクのライフスタイルを勝手に決めつけないでください。そんな頻繁じゃないですって。あと、孤独エッチって何ですか。そんなに独り身を強調したいんですか」

「ぼっちエッチの方が良かった?でも、ぼっちとエッチだと韻を踏んでしまうから、これだと無駄にかっこよくなっちゃうのよね……語感も良いし……」

「知りませんし、それほど語感も良くありませんよ。第一、そんなくだらないことで真剣に悩まないでください」

「ほら、ワタシって妥協を許さないストイックな性格だから」

「それは他で活かすべきだと思います」

「……そうよね。ごめんなさい。才能がなくて妥協するという選択しか出来ない童貞も、悲しいことに存在するのよね……」

「こっちを見ながら言わないでください」

「才能ではなく梅干しの種を与えられたアナタのところへ全裸の天使が現れることを祈っているわ」

「わざとらしく涙を拭わないでください」

「それもそうね。アナタ如きのために演技するのも馬鹿らしいわ。そうそう。“如”で思い出したのだけれど、“突如”も中々卑猥よね?」

「……その話題、まだ続けるんですか」

「ほら、ストレートなモノだと話題を反らそうとする。変化球の方が好きとか、とんだ変態さんね」

「先輩はボクを変態と罵りたいだけですよね?」

「アナタが韻を踏んでもかっこよくないわよ?そうね変化球なら……“拙子(せっし)”なんてどうかしら。アナタにピッタ――」

「ピッタリじゃねえよ!先に言っておきますけど、ボクは全然ロリコンなんかじゃないですからね」

「なら“下拙(げせつ)”ね。卑しいという意味もあるし」

「下ネタに手を出す先輩の方がピッタリじゃないですか」

「残念ながら、“下拙”は男が使う一人称よ。“僕”だの“下拙”だのと男は自分を貶め過ぎよね」

「一人称にケチつけないでください」

「はぁ、この変態は文句しか言えないのかしら……じゃあ、“挊”なんてどう?」

「何ですか、その漢字……」

「見たままよ。手を上下に動かす、正にアナタの人生にピッタリな漢字じゃないの。孤独エッチしてたら死んでました、みたいな? テクノブレイクみたいな?」

「『みたいな?』じゃねえよ!」

「怒鳴らないでよ。童貞が感染(うつ)る。それにしても、“挊”なんて誰が考えたのかしらね」

「いや、そもそも“挊”なんて初めて見ましたし……」

「“挊”は“弄”の俗字よ。変態失格ね」

「失格の方が嬉しいですよ」

「『非変態は、アレを固く握りながら笑えるものでは無いのである。変態だ。変態の笑顔だ。ただ、アレが醜い皮に包まれているだけなのである』」

「太宰治に謝れ!あと改変するにせよ、もっと上手く弄れ!」

「アナタ以上に上手く挊れるはずないじゃないの。あ、ちなみに“挊”には自慰の意味もあるんですって」

「知らねえよ」

「本家の“弄”は、玉を両手で持って遊ぶ様子を表した文字なのだけれど、竿よりも玉の方が気持ち良いのかしら」

「知らねえよッ!」

「知っておきなさいな。アナタも将来、新しい漢字を生み出すのだから」

「そんな形で歴史に刻まれたくないです。…………って先輩、なんで自分だけ帰り支度してるんですか」

「下校時刻だからよ。こんな変態養成所なんて一刻も早く帰りたいもの」

「学校は変態養成所じゃないです」

「“学校”よ? 木との交わり方を学ぶ施設じゃないの」

・・・・END・・・・

 

※エルバッキーさんの短編集『闇鍋』より転載しました。

 
COMMENT:3/4から教えない性教育の記事を連投していますが、昨日の参考図書紹介記事がみうらじゅんでしたので、どんどん脱線して道草を食って行こうとおもいますww
たまたまネットで見つけた対話劇が下ネタを扱っているんですが、かといって下品すぎず、笑いや教養が感じられる内容でしたので、今日はそれを皆さんにご紹介したくなりました。漢字一つだけでこれだけ妄想が膨らませられる人間ってすごいな〜っておもいます。笑
posted by Akinosuke Inoue 10:33comments(0)trackbacks(0)pookmark


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