往来物手習い

むかし寺子屋では師匠が書簡などを元に往来物とよばれる教科書をつくっていました。
寺子屋塾&プロジェクト・井上淳之典の日常と学びのプロセスを坦々と綴ります。


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ヤニス・クセナキスのことば

クセナキス

 


どんな運命にみちびかれているのか、

わたしにはわからない。

わかっているのはただ、

もうすこしで生命をうしなうところだったこと、

何もなしとげることなしにおわったかもしれなかったこと、

これらの試練によってきたえられたこと。

すべてはこれでよかったのだ。


ギリシア人はこうなのだ。

自分が何者かを知ろうとし、

あらゆる種類のすばやく、暴力的な、

時には致命的で、

そのはてに死が待つような行動に

身を投ずる用意がいつもできているのだ。


※ギリシアの作曲家ヤニス・クセナキスのことば

クセナキス『音楽と建築』訳者・高橋悠治さんのあとがきより)
 

高橋悠治さんが演奏するヘルマのビデオ映像がYouTubeにあるので貼り付けておきます。
 
このビデオのソースは、1998年6月にNHK-Eテレ「ETV特集」で放映された
「自由への闘い 作曲家クセナキスの半世紀」
 
曲のタイトル「ヘルマ」はつながりという意味のギリシア語で、
現代数学の集合論をつかって、クセナキスが悠治さんのために1961年に作曲。
 
ビデオの中で悠治さんが演奏しながら曲について解説されていますが、
メロディがあってハーモニーがあるという音楽とはまったく異なり、
ピアノの鍵盤88鍵の音を3つの集合A,B,Cに分け論理演算を施して配置していく構成。
 
少し前に書いた記事で、エピクロスの原子論爛リナメンに触れましたが、
最初はゆっくりと静かに始まり、
まっすぐに落ちていた原子がわずかに逸れて、まわりとぶつかり合い、
徐々にさまざまな動きが起こっていくというイメージ。

 

悠治さんのビデオは部分だけで全部演奏していないので、
江村夏樹さんという日本人のピアニストが
コンサートでヘルマを弾いているライブ演奏の映像を。

演奏がおわったときの表情がとっても嬉しそうでいいですね〜
 


次は、クロード・エルフェというフランスのピアニストです。
 

もうひとつだけ楽譜付きのを。
演奏はMartin von der Heydt というドイツ人のピアニストです。
同じ演奏のライブ映像もこちらにあります。
江村さんは楽譜を見ながら弾いていますが、この人は全部暗譜しているようですね。
 
悠治さんが初演した当時、「こんなに難しい曲を弾ける人は、世界中広しといえども悠治さんしかいない」と言われたこの曲も、boosey & hawkesという出版社から楽譜が出版されていますし、いまでは現代音楽の古典として、たくさんのピアニストが採り上げ弾かれるようになりました。
 
これらを比較して聞いてみると、けっしてめちゃくちゃ弾いているのではないことがわかるとおもいます。
 

また、こちらにこの曲の解説と、演奏したことについて書いた記事があるので参考まで。
悠治さんはヘルマを1ヶ月ほどで弾けるようになったと聞いていますが、3ヶ月も練習すれば、だれでも弾けるんじゃないかということも書いてあります。

この曲の最後のページは、時間にして10秒ほどで、楽譜はこんな感じなんですが、その前に4秒ほど沈黙の部分があります。
ここを聞きながら思い浮かぶイメージは、大花火大会のフィナーレなんですが、この曲の一番のクライマックスというか聞かせどころですね。

ヘルマの最終ページ


この最後のページで使われている音の配置について、
ベン図はこういう図になります。(こちらのページから拝借しました)

ベン図F



さいごに、クセナキスに関しての最新情報をふたつご紹介。

音楽と建築


冒頭に引用したクセナキスの言葉は、
1975年に全音楽譜出版社から出された『音楽と建築』のあとがきにあるんですが、
現在では絶版となっているこの『音楽と建築』が新しい装丁となって、
来月7/12に河出書房新社から、旧版と同じ悠治さんの翻訳(改訳)で出ます。
音楽と建築(新訳)
また、クセナキスの著書Formalized Music は長年邦訳が待たれていたんですが、この秋に筑摩書房から出版されるとの情報を得ました(発売日や価格など詳細未定)。


 
6/4の記事で高橋悠治さんの『自然について』のテクストを紹介してから、エピクロスークセナキスとつながってきたんですが、どうやらこの辺りで面白いシンクロナイズが起きているようですね〜
またそのうち詳しく書いてみようとおもいます。(^^)/
posted by Akinosuke Inoue 23:55comments(0)trackbacks(0)pookmark


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